2017年02月02日
共働き世帯向け住宅の提案が必要な時代
【共働き家庭が増えてきた背景】昨年暮れに、ハウスメーカーから変わった住宅が発表されました。
「家事シェアハウス」という聞き慣れない名前。
十勝には営業所がないメーカーなので、ご存じの方は少ないと思います。
これは、若者向けのシェアハウスとは全く違い、子育て世代向け新築住宅に「家事シェア」という考えを取り入れたプランを提案するというものです。
北海道はもともと共働き比率が高めですが、全国的にみても共働きの比率が増えています。日中はお父さんもお母さんも家にいない、となると一番困るのが部屋のなかの散らかり具合。
バブル崩壊以降、サラリーマンの平均年収は伸び悩むどころか下がっており、男=稼ぐ、女=家を守る、という旧来の図式では生活が維持できないという事情があります。
【家事をしない男性】
こうして経済的理由で女性の社会進出が進んできたのですが、家事分担に関しては、日本は後進国かもしれません。平成23年に総務省が調査した統計によると、育児を含む1日あたりの平均家事時間は、男性が42分に対して女性は3時間35分。これが子育て世代まっただ中の35~39歳になると、男性が41分に対して女性は4時間54分。この差はあまりにも大きい。この要因の1つに、女性に対する家事能力の期待が諸外国に比べてとても高いというところにあるようです。
外資系企業が10年ほど前に主婦を対象とした調査では、日本人主婦の1日の平均家事時間は4時間24分。これに対し、アメリカや中国は半分ほどの時間で、日本人主婦の仕事の長さが浮き彫りになっていました。
調査項目を細かく見ると、たとえば1日3回以上食事を作る、1日3回以上食器を洗うと答えた主婦の割合は日本だけがそれぞれ過半数を超えていました。中国や東南アジアでは、朝食は屋台のような外で食べる割合が結構高かったと思いますし、弁当を子どもや夫に持たせるという習慣も日本ならではのもの。
もちろん、そのきめ細かな家事のおかげで、日本人は日々の生活を大切にする習慣が根付き、健康や身の回りの清潔さに対する関心が高かかったことがこれまでの発展や繁栄を支えてきたのだと思います。
また、OECD加盟国25カ国で男性と女性の1日あたりの家事労働時間を比較すると、その差が一番小さかったのがノルウェーで31分(男性184分、女性215分)。以下、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの順で北欧諸国が続きます。実は、18位のオーストラリアまでは男性の家事時間は平均150分ほどもあります。これに対して日本はなんとブービー賞の24位でその差237分も(男性62分、女性299分)。
一方、国立社会保障・人口問題研究所が5年おきに調査している「全国家庭動向調査」によると、1日の家事時間は専業主婦の妻が約6時間、パートタイムに出ている妻は約4時間半、常勤している妻は約3時間と常勤の妻は短め。それでも、常勤の妻の約3割は平日に1日4時間以上の家事をしているそうです。たとえば時間配分を朝1時間、夜3時間とすると、家に夜6時に帰ってきたら、夕食の時間を除いて10時近くまで家事をしている計算。これじゃ休まるヒマがありませんね。
世の中が変わってきたのだから、暮らし方、意識も変えていかないと。
共働きの家庭では、次第にそうなっていくでしょう。
【家事シェアハウスとは】
ところで「家事シェアハウス」は、男女で「夫はゴミ捨て」「妻は料理、掃除、洗濯」と家事分担を決めてしまうのではなく、「1つ1つの家事をシェアしよう」と各自ができることをできるだけたくさんやる、というプラン提案をしている住宅です。たとえば、家族の持ち物や服などをお母さんが管理するのではなくて各個人ができる仕掛けや間取りを考えています。
たとえば、洗面脱衣室を大きめに作ってそこにファミリークローゼットを設け、そこで外出着から部屋着に着替え、外出着はそこに掛けておく。Yシャツなど脱いだものはそのまま洗濯カゴに入れて、そこで洗濯、アイロン掛け、外出着の収納などが一括してできる。さらに、ランドセルや仕事用お父さんの仕事かばんなどは、玄関横に片付けロッカーを作ってそこに各自が収納する。
家族みんなが同じルールを共有してそのルールを守れば、片付けの必要性がうんと減る、ということです。
もっとも、「家の間取りや仕様を工夫すれば家事がシェアできるようになるのか」という問題は、「ダイニングに勉強コーナーを作れば子どもが勉強するようになるのか」と同じ問題かもしれません。
家はスマホやパソコンで言う「ハードウェア」ですが、そこでの暮らし方は「ソフトウェアやアプリ」のようなもの。
子どもが進んで勉強するようになったり、家族全員が家事を少しずつシェアするようになるには、最後は夫婦の努力や心がまえ、そしてそれらを子どもたちにしっかり伝えることが大事なのかと思います。
それでも、このような問題提起がされたことは注目すべきことですし、何より地域の工務店にとっては、このような提案をプランに盛り込むことで、「お客様のことを思って提案できる」工務店として評価されるチャンスだと思います。
札幌でも、主婦の建築士が家事を楽にする動線や収納を提案したモデルハウスを造り、数年前に公開した工務店もあります。子育てに焦点を絞ったプラン提案もいいのですが、「夫の家事協力がないから子育てがゆううつだ」と思っている共働きの奥さま方が多いのなら、家事を楽にする提案、夫や子どもが進んで手伝ってくれるような提案があると、「ここで建てたい」と共感するお客様が増えるのでは、と思っています。
【参 考】
■サラリーマン平均年収の推移
http://nensyu-labo.com/heikin_suii.htm
ピーク時より約70~80万円も平均年収が下がっています
■NHK 国民生活時間調査2015
http://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/20160217_1.html
※家事については、
http://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20160217_1.pdf
の44ページから46ページに記載※
■プレゼン資料の元ネタ帳
http://preneta.b2you.biz/shakaisekatu/kaji.html
※元になっている引用データは、
平成23年社会生活基本調査生活時間に関する結果(要約版)
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/pdf/houdou2.pdf から
※※家事については、16ページから19ページ(PDFのページ数で28~31ページ)に記載
■日本は24位!世界で最も家事時間の男女差が短い国トップ25
http://suzie-news.jp/archives/7230
※上位18カ国の男性家事時間は約2時間半なのに対し、日本は1時間!少なさが際立っている
■専業主婦とパート主婦、家事時間の違いはどれくらい? 妻の家事時間をグラフ化してみる(2014年)
http://www.garbagenews.net/archives/1436105.html
※ネタとなった元データは http://www.ipss.go.jp/site-ad/index_Japanese/ps-katei-index.html
■15年間ほぼ横ばい 女性の家事時間なぜ減らない
http://style.nikkei.com/article/DGXDZO57007530V00C13A7W14001?channel=DF260120166504&style=1
※時短家電を使えというくだりは「!?」という感じだが、家事代行サービスの利用はこれから流行るかもしれない※
■世界で最も家事時間が長い!?日本の「やりすぎ家事」を見直してもっと楽チンに
http://sp.lalu.jp/article/show/aid/2351.html
※ネタとなった元記事は http://www.j-cast.com/trend/2009/08/10047092.html
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