マーキテクト(株)は2020年に鹿追町で創業した新しい会社。外城征教社長はまだ30代の若さ。起業した経緯とこれからの家づくりについて話を聞きました。

事務所兼自宅の外観

外城征教社長

起業したきっかけはなんですか？

外城　父親の外城晶啓が創業した外城建設に入社して9年間、営業、プランニング、現場管理など住宅建築に必要な一通りの仕事を身につけました。その間、十勝管内で畜舎や住宅などのお仕事をいただく機会が増えました。

鹿追町の人口は5400人とコンパクトな町ですが、酪農が盛んで大規模農家が年々増えるなど、活気があります。また、家畜から排出される糞尿を発酵させてバイオガスを作って発電し、排熱を作物の温室栽培に利用する取り組みを行っていることでも知られています。さらに、自衛隊の駐屯地があり、定住する人も多くいます。

十勝の畜産・酪農等の一次産業はもちろんのことSDGｓの取り組みを積極的に行っているこの町に可能性を感じ、畜舎建築にも力を入れようと2020年春にマーキテクト株式会社を鹿追町内に設立しました。当初は、畜舎は「マーキテクト」、住宅は「外城建設」と、二刀流で仕事をしていました。

そのうち、住宅のリフォームやリノベーションの仕事も出てきました。2021年9月に外城建設を退社し、マーキテクトで住宅建築も受注することになりました。

社名のマーキテクトですが、外城征教の「征教(まさのり)」の「ま」と、建築を表す英語「Architect」を引っかけた造語です。

十勝の地場産業とも言える畜産。生産業の仕事に欠かせない畜舎と、家族が住む住宅建築を中心に地域に根を張った仕事を続け、お客様に必要とされる建築会社になりたいと考えています。

自宅でくつろぐ外城征教社長

自宅のLDKはナチュラルな雰囲気

リビング左手にある大きな引戸を開けると和室

ツーバイフォーとの出会いはどのようなものでしたか？

外城　父が創業した外城建設では、早くからツーバイフォー工法に取り組んでいました。子どもの頃から、大工さんや職人さんたちの働きぶりを見ていましたし、住宅建設の仕事を志したとき、ツーバイフォー工法で取り組むのは当然のことと考えていました。

高校卒業後、ツーバイフォーの本場であるカナダに留学し、建築デザインについて学びました。いくら性能の良い住宅を建てても、お客様にその良さをアピールし、伝わらなければ、せっかく優れた技術を持っていても生かすことができません。カナダでは、デザインだけでなくプレゼン技術も学びました。海外の異文化に揉まれ、様々なことを経験し戻って来ました。

その後は、首都圏の大学に編入して日本の建築を３年間学び、その後７年間東京の設計事務所へ就職。住宅とは違う施設建築の設計などにたずさわり、その面白さは刺激になりました。

10年後に十勝・清水町に戻り、外城建設で住宅営業やプラン提案、現場管理などを行って経験を積み、独立しました。

キッチンの動線にこだわった

和室には本格的な床の間を設けた

どんな家づくりをお客さまに勧めていきたいですか？

外城　お客様が満足し喜んでくれる家づくりです。基本的な考え方は、外城建設時代から変わっていません。ツーバイフォー工法による高断熱・高気密の家づくりを基本に、塗り壁や無垢フローリングなど、自然素材を多用した健康にやさしい家づくりを提案しています。さらに今後は、カーボンニュートラルに向けたゼロエネ住宅にも挑戦したいと考えています。

現在の自宅兼事務所は、私の思いが詰まった建物です。山々を望む広い敷地に、緩い勾配の三角屋根。塗り壁と木目調サイディングを張り分け、大地の力強さとおおらかさを感じるデザインにしました。

室内は、無垢フローリングに塗り壁を使い、温かみのある色彩でまとめています。ツーバイフォー住宅ですが、和室の造りも本格的にし、立派な床の間も設けました。キッチンの造作収納は、食洗機から食器を取り出したら振り向くだけで動かずに食器を収納できるムダのない動線で設計しました。

性能面では、ツーバイシックス断熱に付加断熱を併用することでUA値0.26Wと国の省エネ基準を大幅に上回る断熱性能を実現しました。この自宅兼事務所をモデルハウス代わりに自社の家づくりをPRしています。

十勝の酪農製品は海外にも知られるほど人気があり、今後も続くと思います。そうした十勝の畜産業のみなさんに役立つ仕事をしたいと考えています。畜舎などの仕事を通じて、住宅部分のリフォームをお願いしていただくなど、ご縁が深まりました。暖かく光熱費がかからない、そして健康的な住まいを十勝のみなさまにご提案していきたいと考えています。

玄関はシューズクロークを充実させた

塗り壁に家族の手形を押して思い出に

現在建築中の新築住宅（完成予想図）