2016年11月05日
工務店とクラフトビール
最近、テレビ番組で「クラフトビール」シェアナンバーワンの会社がその秘密を紹介していました。「クラフトビールって何?」という人には、「地ビールのことだよ」といえばピンとくるかもしれません。大手会社とは比べものにならないほど小さな事業規模で、個性的な味のビール作り、地域に根ざした事業展開をしています。そういう意味では、工務店と似たところがあります。
■基本は弱者の戦略
さて、クラフトビールでシェアナンバーワンの会社(以降、A社とします)は、いろんな手を使って知名度拡大に務め、ビールの新たな需要も発掘してきました。
基本的な考え方は弱者の戦略です。既存のビール愛好家を取り込むというよりは、1.新しい客層を開拓することと、2.ロイヤリティー(忠誠心)のある優良顧客を増やすという2つの戦略です。
1.新しい客層の開拓
既存のお客様に売り込もうとすると、大手メーカーとお客を取り合うことになり、どうしても宣伝力の差が出てきます。新しい顧客を開拓すれば、そうしたリスクが小さくなります。
そこで、今までビールを敬遠していた20代の若い客層や女性客にビールを売り込むのです。味の好みや試作品の反応など、実際にターゲット層の意見を聞いた上で商品開発を修正し、ビールらしくないネーミングにもこだわって発売したところ、大ヒット商品となりました。
2.優良顧客を増やす
優良顧客づくりは、要はファン作りです。
A社が十数年前に倒産寸前に追い込まれた頃、頼みの綱は当時まだマイナーだったインターネット通販でした。そこで、登録した顧客を対象にしたメルマガに担当者の人柄がにじみ出るような工夫をし、読む人をクスッと笑わせながら、個性的な味のビールを売りこんでいったのです。
その後、バルを借り切って自社のビールに合う料理を提供するイベントを開催し、社長自身が参加客と楽しみながらビールのおいしさを伝えました。その楽しさをSNSやブログで参加者に拡散してもらい、より多くの人に伝えていくのです。今では、自前のバルを数カ所に持ち、大規模なイベントも開催しているとか。テレビでは、参加者が写真を撮りたくなるような仕掛けを会場にしていると紹介していました。
社長の考えは、「ビールは人を楽しくしないといけない」です。インターネット通販モールが開催する通販店の売上表彰で毎年のように受賞しているA社は、授賞式に社長が必ず仮装して登場するそうです。ふざけているようで、人を楽しませることに真剣なのです。
■ビールづくりへのこだわり
そんなA社は、ビール造りにたいへんなこだわりを持っています。大手メーカーが製造するのは、「ラガー」と呼ばれる低温で長期間発酵させたスッキリした味わいのビール。飲むときも冷蔵庫でキンキンに冷やしますよね。一方でA社が製造するのは、常温で短期間発酵させる「エール」と呼ばれるフルーティーな香りとコクが特徴のビール。赤ワインのように常温よりやや低い温度が飲み頃と言われています。大手とは全く違う味と個性を売り物にしているのです。
こうしてみると、「人が飲むのとはちょっと違うこだわりのビールで、おいしくて楽しい暮らしが過ごせる」という会社のメッセージが伝わってきそうです。
その結果、A社はクラフトビール業界でシェアナンバーワンを獲得し、生産能力拡大のため、大手ビールメーカーと提携もしました。大手コンビニと共同開発して販売したビールは、そのコンビニで月間売上が「一番搾り」を超えたそうです。
■工務店の家づくりへのヒント
工務店の家づくりも、このビール会社のやり方に今後のヒントがあるかもしれません。
20年ほど前までは、日本経済もまだまだ力があり、家を建てたい人が工務店に行列を作るほどいた良い時代でした。
でも今は、景気が長期低迷し、人口が減少しています。特に家を新築する20代後半から30代の子育て世代が減っています。20年前と比べると、新築の戸建住宅の着工数は約3分の1に減っています。たとえば、十勝で一番住宅を売った会社は、20年前は約150棟建てていました。ところが今は50棟前後。やはり3分の1に減っています。
この数少ない新築需要の中で、家を建てたい人に選ばれるには、先のクラフトビール会社のようなこだわりと明確なメッセージが必要じゃないかと考えます。
そのメッセージは、家の性能やデザインだけでなく、「暮らし方」「生き方」そのものかもしれません。オーガニックで自然素材にこだわった暮らし、クールなデザインで最先端の省エネを実現した暮らし・・・人が感じる魅力はさまざまです。
■生き方、暮らし方で"リア充"になる
たとえば、工務店の社長自身が家庭菜園で収穫した野菜を使ったビザを庭のピザ窯で焼いたり、AppleのHomeKitを活用したLED照明(フィリップス)や暖房(デ・ロンギのパネルヒーター)のスマートなコントロールを実際にやってみせるなど、暮らし方、生き方のメッセージをブログやSNSで発信し、それに共感した人が家を建てたいと依頼してくるようなアピールの仕方が必要かもしれませんね。
そのためには、社長自身、社員自身が自分の家族や趣味を大切にし、充実した暮らし、生き方を送ることが必要です。価値観をお客様に押しつけるのではなく、真似したくなるような気持ちにさせる。Facebookでリア充ぶりをアピールするような、そんな感覚かも。人は、楽しそうに生きている人、幸せそうに生きている人を真似てみたいと思うものです。
幸い、十勝2×4協会には、個性豊かなメンバーが揃っています。
性能が良くてリーズナブルな価格の住宅を建ててくる会社、かわいらしい素敵なおうちが得意な会社、かっこいいデザインが得意な会社、近未来の省エネ住宅が得意な会社・・・などなど。
家を建てたい人は、みんな幸せな暮らしを望んでいます。
どの会社と相性が良さそうか、当協会の会員紹介ページをご覧になって選んでみるのも良い方法だと思います。どの会社を選んでも、後悔はしないと思います。
「どの会社を選んでも」と書けるのは、定期的な気密性能の測定や、建築現場を会員がチェックするフレーミング検定などの制度をずっと続けるなど、会員の建てる住宅は一定の性能以上で安心できるからです。性能が安心できるからこそ、ライフスタイルに合った家を選べるのです。
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(2016年11月 5日 17:07)トラックバック(0)
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