2016年03月30日
地域工務店の戦略~福島明先生を招き勉強会を開く(1)
十勝2×4協会は3月23日、帯広駅前のとかちプラザでセミナーを開催しました。
今回は、「とかち新住協」と「とかちの木で家をつくる会」の2団体からの後援もあり、十勝管内から多くの工務店が参加しました。当会を含め3団体とも地場ビルダーとして地域に合った家づくりや地産地消に取り組んでいます。
<福島先生の略歴>
セミナーは北海道科学大学の福島明教授を講師に招き、「北海道スタイルと地域工務店の戦略」というテーマで勉強しました。
福島先生は、北海道立総合研究機構 建築研究本部 北方建築総合研究所(略称:北総研)に入所後、寒冷地住宅・建築の環境技術の研究に従事し、道の北方型住宅プロジェクトや国の省エネルギー基準策定等に参加。環境・省エネルギー建築賞や国土交通大臣賞、空気調和衛生工学会賞などを受賞。その後、北総研の副所長を経て現職に就きました。
セミナーでは、3年前の省エネ基準改定についておさらいし、次に今後の省エネ政策の行方について説明しました。そして北海道スタイルの家づくりと工務店が目指す家づくりの方向性について、最後に地域工務店が取り組むべき重要なテーマの1つである性能向上リフォームについて取り上げました。
以下に、福島先生の講演内容をかんたんにまとめました。
■■国の省エネ基準改定のねらいと今後の住宅■■
3年前の省エネ基準改定では、それまで断熱性能優先だったのが、設備の省エネも合わせて評価するようになりました。国がこうした道筋を示す遙か前から北海道では断熱住宅の研究を進めてきた歴史があります。十勝2×4協会が発足したての1979年、道内の研究者らが30年後の新築住宅の性能目標を考えました。研究では、目標値を現在の北方型住宅ECOレベルに設定しており、その成果が後の北方型住宅基準にも生かされました。
北方型住宅ECOや札幌版次世代住宅基準など、国の省エネ基準を大きく上回る断熱基準が道内で出てきて、地域工務店は果敢に挑戦し、見事にクリアしてみせました。今や外壁に30cm厚、40cm厚の断熱材を入れている住宅も出てきています。十勝2×4協会のメンバーのみなさんも、そういった住宅に挑戦された方がいらっしゃると思います。やってみると意外にできるものです。
一部の大手ハウスメーカーは大胆な超高断熱化を進めており、勢力を伸ばしていますが、大半は取り組めていません。規格化を進めた大量生産システム(=工業化住宅)なので、急に超高断熱化に対応するのは難しいからです。そこに地域工務店が勝つチャンスがあります。今後は、北方型住宅ECOレベルの2倍の断熱性能となるUA値=0.2Wレベルを目標値に進めてほしい。そこまで進めば、国が推進するZEH(ゼロエネルギー住宅)の実現も容易になるし、エネルギー使用量の低い住宅になります。
■■高断熱化の恩恵は省エネ以外にもたくさんある■■
断熱性能向上の価値は省エネだけではありません。
快適性、耐久性の向上や建物価値の向上だけでなく、健康増進や災害時、老後の安心にもつながってきます。
循環器系統の病気は、血圧の上昇が引き金となり、味付が濃く、塩分摂取量の多い地域は高血圧の人が多く、発症率が多くなるため、患者発生率は東高西低の傾向です。ところが、北海道だけは例外で、全国平均程度です。これは、北海道で早くから高断熱・高気密住宅が普及してきたからでしょう。
さらに、断熱住宅と住む人の健康の関連を研究する動きが最近活発です。慶応大学の研究によると、室温が低下することで60代以上の高齢者は血圧が大きく上昇するそうです。
これまでは、高断熱化を進めても光熱費の低減効果で見れば元を取るまで時間がかかると指摘されていました。ところが、こうした室温変動と病気の関係が明らかになるにつれ、高断熱化で室温が安定することで健康増進や健康保険負担の軽減効果があると評価されるようになり、10年ほどで元が取れるという試算結果も出てきました。
※次回の「地域工務店の戦略~福島明先生を招き勉強会を開く(2)」に続きます。
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(2016年3月30日 16:49)トラックバック(0)
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