2015年06月09日
光熱費の安い家とは(3)
1)建物の性能
2)設備の性能
3)工事の確かさ
それでは、この3条件がバランス良くとれている工務店、ハウスメーカーをどう判断すれば良いのでしょうか?
国の省エネ基準では光熱費がすぐにわからない
1)2)を表す方法はいろいろありますが、国の省エネ基準に従って表すのが間違いがありません。この基準は平成25年に改定され、それまで建物の断熱性能だけが基準だったのが、それに加えて暖房や換気、照明など使うエネルギー量の総量を規制することになりました。ただし、テレビや冷蔵庫、パソコンなど、家電で使うエネルギーは規制の対象外です。これらの計算は、国が推奨するプログラムがネット上で使えますので、工務店やハウスメーカーの多くが使っています。
ただ、国の計算ブログラムでは、光熱費がいくらかまでは表示できません。計算結果をもとにした光熱費シミュレーションは、工務店や設計事務所の仕事となります。プログラムの種類、試算する場合の条件設定(暖房の温度設定など)、いろいろな要素が違ってくる可能性があるので、A工務店とB工務店の光熱費試算を比べても単純に優劣を決められません。
自動車も、カタログ燃費と実際の燃費が大きく違うことが問題になりますね。ただ、カタログ値が良い車は悪い車よりも実燃費も良いことがほとんどです。これは、燃費表示が同じ基準(JC08モード)で実際に測定されているから、比較しやすいのです。
燃費保証という考え方もある
そこで、本州では燃費保証というサービスを始めた工務店があります。引き渡し後3年間、設定した年間光熱費を上回らないことを保証し、万が一上回った場合はその差額を払うというものです。買う立場からみれば、とても安心だと思います。
この会社では、お引き渡ししたお客さまの光熱費を継続的に調べており、その経験から「住宅の床面積あたり○○○円以内」というやり方で単純計算しています。設備は全てオール電化に限定しているので、データ収集もしやすかったようです。制度を開始して数年になりますが、保証金額をオーバーしたことは1度もないそうです。
北海道では、まだ広まっていません。1つは、暖房の設定温度が住む人によってまちまちであること。20度で十分とうい人と、25度に設定する人では暖房費は大きく変わります。さらに、暖房に灯油、電気、ガスなどいろいろなエネルギー源を使っており、保証金額の出し方が難しいことなどがあるようです。今後の工務店の取り組みには注目したいところですね。
3)ですが、高性能住宅の必須条件である暖房、換気、気密、断熱、この4つがきちんと工事されているかどうかを確かめることが必要です。
暖房については、引き渡し前に試運転を行い、設計通りに動くかどうかのチェックをします。これはほぼ全ての住宅会社で行っていると思います。
換気に関しては換気風量を測定する方法があります。これは設計通りに換気がされるかどうかの測定ですが、実施しているところはまだ少ないと思います。。
気密は、気密性能を測定し、その数値が1cm2/m2以下であること。これは、十勝2×4協会の目標値です。断熱性能が高くても、すき間が大きいと、断熱材の性能が十分に活かせなくなるからです。
※地域型住宅ブランド化事業では当協会は0.5cm2/m2以下と、さらに厳しい基準を設けています※
※地域型住宅ブランド化事業では当協会は0.5cm2/m2以下と、さらに厳しい基準を設けています※
断熱については、全ての箇所を第3者がチェックすることはかなり難しいと思いますが、北海道では問題ある施工をする会社はあまりないと思います。というのも、断熱施工が不十分だと冬に寒さのクレームが出て大問題となるからです。
このように、全て完ぺきに検査し、性能を保証するということは、住宅ではまだ難しいと思います。
そこで検討中の工務店で、建てたお客さまの評判を聞くことはたいへん参考になります。
親切な会社なら、建てたお客さまを紹介してくれると思います。
さて、次回は電気、ガス、灯油、自然エネといろいろあるエネルギーのうち、どれを利用するのがいいのか、その選び方のヒントを書きます。
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2015年06月02日
光熱費の安い家とは(2)
3条件が揃わないと光熱費は安くならない「光熱費の安い家」について、3つの異なる主張がネットで検索できてしまう理由。
それは、「光熱費が安い家」を実現するための条件は1つでないからです。
つまり、光熱費の安い家を建てるには、以下の3つの条件が必要です。
1)建物の性能
2)設備の性能
3)工事の確かさ
ここまでは、 前回 もご説明しました。
もう少し詳しく説明します。
1)は、暖房費に大きく影響します。断熱・気密性能が悪いと、暖かい空気が建物からどんどん失われていくからです。災害でエネルギー供給が止まってしまい、設備が使えないときに特に実感できる差となります。この建物性能は設計性能として数字で表現できます。
2)は、設備の消費エネルギーを減らすことによって光熱費を下げるというものです。電気温水器の代わりにエコキュートを使えば電気代が大幅に安くなります。HEMSと太陽光発電を導入することで、電気の無駄遣いが減り、しかも売電によって電気代が大幅に安くなります。身近なところでは、LED電球もそうです。この設備の性能は、カタログに一定の基準で表示されているものが多く、比較しやすくなっています。
3)は、1)2)と密接な関係があります。建物や設備が立派でも、工事がいい加減だとその性能を発揮できないのです。高性能の断熱材を使っても、その入れ方がいい加減ですき間が空いていたらそこから熱が逃げていきますし、室内の湿気を逃す施工をしていないと、断熱性が良くても空気が結露して断熱材にカビが生え、後で大問題になる可能性もあります。設備でも、太陽光発電パネルの施工がいい加減なために、シミュレーションの発電量を大きく下回ってトラブルになった例もあります。
十勝2×4協会が毎月行うフレーミング検定。施工技術のチェックを会員で行い、施工改善のアイディアを出しあうなど、協会全体のレベルアップを考えて行っています。
言い換えれば、1)2)は「こういう性能の建物・設備で作りなさい」という設計内容です。実際にその性能を確保するためには、しっかりした工事が伴うことが必要です。
つまり、1)~3)全てが揃わないと光熱費の安い家は実現できません。
ネットでの主張が極端なわけ
ネットで検索したブログやホームページの内容が極端な主張に見えるのは、先ほど説明した1)~3)のうち、1つの条件しか取り上げていないからです。「断熱性能を上げても電気代は安くならない」という主張のブログは、工事技術の違いで光熱費が変わるかということは書かれていません。「住宅会社の言いなりになってスペックを上げすぎないように」とは書かれています。なぜなら、お施主さまが書かれているので、工事技術については善し悪しをジャッジできなかったからでしょう。
実はこの方、温暖地ですが2×6の高性能住宅にお住まいです。年間光熱費も公表されていますが、オール電化で年間9万円弱とさすがに安い。本来なら、この断熱・気密性能の力をアピールしていただきたいのですが・・・
大切なのは3つのバランス
工務店、ハウスメーカーの役割は、1)~3)のバランスが取れた家を建てることです。このバランス(さじ加減)が、プロのノウハウであり、専門家である理由です。大工のウデがいくら良くても、建物、設備の設計性能が悪ければ意味がありません。建物性能が良く、大工のウデが良くても設備の選択や設備設計が悪ければ光熱費を安くできません。
じゃあ、どうすればいいのでしょうか?
次回、「光熱費の安い家とは(3)」に続きます。
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