2013年10月17日
さぁ~大変だ!!
少子高齢化に伴う人口減少時代の始まりに実施が決まった消費増税。税率10%への引き上げは先送りされる可能性が高いでしょうが、いずれにしても再来年以降、新築市場の縮小が本格的に始まります。7年後の2020年(平成32年)、新築の持家市場は3割超の着工減に晒(さら)され、大工職人など技能労働者の減少に比例するように元請工務店の数も現状の4割にまで減少するでしょう。家づくり・家守りに関わる市場の構造そのものが変わります。「変わる市場・変える経営」と題し、縮小市場に対抗するビルダー・工務店経営のあり方をシリーズ企画で考えていきます。先人曰く「荒れる巳(み)年」。消費増税前の駆け込み客からの引き合いに慌ただしく対応するビルダー・工務店の足元で今、様々な事柄が起こっています。
■工程表のない現場
今秋以降、一部の地場大手ビルダーは1ヵ月に30棟を超える引渡しラッシュを迎えます。現場では電気や設備の専門工事業者が、美装業者と交錯するように慌ただしく出入りします。
ある設備工事業者の話ですが、「今年、家を建てた人は大変ですね」。慌ただしさに紛(まぎ)れて現場の工程管理が混乱していることを危惧する声です。
「どうせ混乱するのだから」と工程表をつくらず、電話一本で下請業者を手配する元請会社の帳場。現場に行ってみると終わっているはずの基礎工事が途中だったり、撤去されているはずの足場がまだ残っていたり。
配管のスリーブを通す間もなく基礎工事が終わっていて、仕方なく配管を回すことも。下請業者の手が回らず基礎工事の段階で1週間以上も施工がストップするケースも少なくありません。
中堅工務店の社長は、新築でもリフォームでも「請負契約書に印を押すときには覚悟が要(い)ります」と言います。直用の大工職人が少なく、外注でどこまで現場をこなせるか、「不安だから」です。
■「1~2年が限界」
地方の元気印工務店の社長も「ここまま走り続けるのも、あと1~2年が限界」とため息をつきます。
住宅の省エネ化、長期優良の推進、既存住宅のストック対策など、国の住宅施策の展開が目まぐるしく、それを支援する補助金事業を活用するにも「体力的にもう限界」だからです。
補助金事業にチャレンジしなければ、住宅施策の流れに取り残される...とわかっていても、「これ以上、社員に無理を言えない」。社長自ら、平日は深夜まで、土日もほとんど休まず働いても「追い付かない」と言います。
「工務店の仕事は家を建てること。構造計算から設計図面の作成まで、工務店が全部こなすこと自体がもう無理」
中小工務店の一部には帳場に突然、退職され、社長夫婦2人で現場対応に追われるところもあります。
■寒い?超高断熱
一方で、札幌版次世代住宅基準のトップランナーに適合するような、壁の断熱厚300㎜超の超高断熱住宅で、建て主から「寒い」というクレームがあった話を聞きました。
気密施工などの工程管理に不備があったかもしれませんが、これを聞いた設計事務所の所長は「5~6月にそういうクレームが起こる可能性はありますね」と頷(うな)きました。
冬場は暖かい超高断熱住宅ですが、暖房の運転を止めた春先以降、躯体の性能を上げるために小さくした開口部からの日射熱が十分取得できず、居住者の意識温度と体感温度に落差が生じ、「寒い」と感じるようです。超高断熱な躯体への「蓄冷」を指摘する見方もありますが、いずれにしても居住者の意識と体感がフィットするのは7月以降になる場合もありそうです。
■あのときが転換点
これらの事柄は氷山の一角です。
しかし、改正省エネ基準(平成25年基準)への適合が義務化され、送配電の分離が予定されている2020年(平成32年)。新築市場が大きく様変わりする7年後に振り返ったとき、「ターニングポイントは(消費増税が決まった)2013年だった」と思うかもしれません。
新築の持家市場が3割超の着工減となり、大工職人など技能労働者の減少に比例するように元請工務店の数が現状の4割にまで減少する...。そんな市場の姿を誰が想定していたでしょう。
そんな縮小市場に対抗するビルダー・工務店経営とは何でしょうか?
次号から①当たり前の省エネ住宅とは?②診断サービスの時代へ③自社の居場所を考える④評判で行列をつくる―などをテーマに、「変える経営」の課題を考えてみましょう。
(北海道住宅通信社より)
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