2012年03月20日
北海道新聞の社説から
札幌市が新年度から、暖房をほとんど使わないで済む省エネ住宅の新築助成制度を始める。 省エネ住宅は建築費がかさむこともあってなかなか普及していない。枠が限られているとはいえ、市が助成することで市民の関心も高まる。歓迎したい。 ただ、この制度が新築だけにとどまったのは残念だ。財源の問題はあるだろうが、リフォームと両輪で進めていくべきではないか。 住宅分野では近年、無暖房住宅という言葉が生まれるほど断熱技術が進んだ。快適さや節減効果はこれまでの比ではない。 助成制度はそこに注目し、先取りして市民に知ってもらう狙いがある。市の地球温暖化対策にもなる。 時代の最先端をけん引役に据える手法はこれまであまり使われてこなかった。新年度は2500万円の予算で、性能に応じて最高水準には最大200万円を助成する。 助成の基準は数値(熱損失係数=Q値)で示した。最高水準(Q値0.5)だと、120平方メートルの住宅で、灯油に換算して暖房に年180リットルほどしかかからない。一般住宅の10分の1以下になる計算だ。 年間4千戸の新築がある札幌市は、2020年には新たに建てられる住宅全てが最高水準ないしそれに準じた市の独自基準を満たすようにする目標を掲げる。 ただし、高性能住宅の建築費は数百万円割高となる。現段階では助成があっても手が届く人は多くない。助成を起爆剤として普及に成功しなければ、持てる人への優遇策に終わりかねない。 成否のカギを握るのは建築のコストダウンだ。 幸い技術革新が進み、省エネに意欲を持つ建築関係者も増えている。輸入や海外技術に頼らない在来工法も、肩を並べる水準に近づく。普及の素地は整いつつある。 新築だけでは、温暖化対策効果は限られる。リフォーム時の省エネ化にも取り組む必要がある。 最近はコストをかけない改修でも、気密性はかなり向上する。札幌市には時期を見定めて、推進に向けた一歩を踏み出してほしい。 道内全体では、道が断熱性、気密性で国の基準を上回る「北方型住宅ECO」(Q値1.3)などの採用を呼びかけてきた。 軒数は増えつつある。だが、助成や優遇策で積極導入を図る市町村は少数だ。道は利用しやすさにも配慮しつつ、もっと省エネの理念を浸透させていくべきだ。 札幌市には、他の自治体にもノウハウを提供し、道内全体を底上げする視点で取り組んでもらいたい。 |
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