社長の車巧造さんが中学生の頃、「かっこいい」と憧れて目指した大工への道。
でも、その道のりは簡単ではありませんでした。技術を学ぼうと職業訓練校に入学しましたが、建築学科には入れず家具や建具製作に必要な木工技術を学びました。その後、建具製作会社に入社して7年間勤め、縁あって十勝2×4協会の会員工務店に転職。ツーバイフォー大工として現場で一から学びます。
一人前の大工となりますが、思うところあって工務店を辞めて小休止。道外に出て建設会社でしばらく働きました。駅の改修工事など住宅とは違う仕事も多かったのですが、幅広い仕事を経験することがプラスになったと言います。
その後、再び十勝に戻って別の会員工務店の下でツーバイ大工として働き出しました。建築士や建築施工管理技士など独立に必要な資格も取得しながら、建設会社に転職。「いつか自分の会社を持ちたい」と考えていましたが、決心がつかないうちにアラフォーに突入。その頃、建設会社が営業拠点をリストラすることになり、独立を決心します。2004年のことです。
良い家を建てたいという思いから「これまでお世話になった方々がいろいろ助けてくれました」と車さん。独立を勧めてくれたのは、取引先の建材店の専務でした。社名の名付け親は、最初に勤めた建具製作会社の社長です。
独立してから、いろんな分野の工事をこなしています。介護保険対象のバリアフリー改修工事や市の公営住宅の改修、住宅のリフォームなど多岐にわたります。リフォームは社長自らが現場に入り、今も現役大工として働きます。
住宅の新築工事も力を入れていますが、人手が限られているため年間数棟が限度。「数は少なくても良い家を建てたい」と、これまでの長い経験を生かし、独自の省エネ住宅を目指しています。
その1つが換気排熱の有効利用。今の住宅は、各部屋の汚れた空気をダクトで集め、集中換気扇で強制的に家の外に出します。ところが、汚れた空気を外に捨てるということは、冬はせっかく暖房で暖めた熱も外に捨てていることになります。
「これはもったいない」と考えた車さんは、集中換気扇から汚れた空気をまっすぐ家の外に出さずに床下空間を通らせて機械室へ。この機械室には、通常屋外に置いてある暖房エアコンやエコキュート給湯機の室外機が置かれており、この生暖かい空気を利用します。そしてようやく外に排出されます。
こうすることで床下空間の温度が上がるため、水道管の凍結を防ぐ効果があります。さらに、エアコンやエコキュートの室外機は、空気から熱を取り出す「空気熱ヒートポンプ」の原理を利用していますが、採り入れる空気の温度が上がることで、効率が大きく上がり、電気代が安くなります。
東京や大阪などでは冬でも気温が氷点下になることはめったにありませんが、北海道では当たり前。すると、ヒートポンプの効率が大きく落ち、電気ヒーターを併用しないと室外機に霜が付いて運転が止まるなど、弊害が出ます。
車さんの考えた方法では、室外機に+15度前後の空気を取り込めるため、ヒートポンプ機器は一番効率の良い状態で運転でき、暖房費が安くなります。また、寒冷地仕様の機械を必要としないため、機器のコストダウンも可能です。
しかし、この工法が行政に認められるには時間がかかりました。「汚れた空気が室内に逆流しないのか」など危険性があるのです。それを解決したのが、長年ツーバイ大工として働いてきた車さんの技術力です。気密性が低い家では、このような仕組みは汚れた空気が逆流する可能性がありますが、会員工務店の下で指導を受けた車さんは、常に気密性の高い住宅を施工できます。こうした取り組みが行政にも認められました。今では、この工法で特許を出願しており、簡単には真似できないようになっています。
このほかにも、メーカーと共同開発した専用工法の太陽光発電に、安くて大容量の蓄電池を持つ独自のスマートハウスなど、長年の経験と技術から生まれたアイディアを車さんは形にしています。これからも「数を追わず、じっくり建てていきたい」と気負いはありません。
企業データ | 2004年 (株)巧建築工房創業 |
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社内体制 | 社長、大工各1名 |
過去の実績 | 創業以来約20戸 過去3年間は平均2~3戸 |
社名 | 株式会社巧建築工房 |
住所 | 〒080-0024 帯広市西14条南13丁目2-40 |
TEL | 0155-21-1847 |
FAX | 0155-21-2688 |
HP | http://k-takumi.jp/ |
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